酒の醸造と酒林


 酒ができるまでには、様々な工程が必要です。米の外側にある雑味のもとを取り除く精米から始まって、洗米、蒸米と続きます。さらに米のでんぷんを糖に変える麹作り、酵母を大量に培養したものである酒母作り。そして、酒母に蒸米、水を加えて行うもろみ仕込み。もろみの中では、麹がでんぷんを糖に、そして酵母が糖をアルコールにするという過程が同時進行し、酒ができあがるのです。このように手間をかけて醸される酒は、一滴一滴がまさに珠玉の逸品と言えます。
 新種ができあがると、各蔵の軒下には、真新しい酒林が吊されます。これは杉玉とも呼ばれ、杉の葉を球状に束ねたもの。酒蔵のシンボルとも言うべき存在です。青々とした作りたての酒林が古いものと掛け替えられるのを見て、人々は新酒ができあがったことを知るのです。ちなみに酒林を杉で作るのは、酒に縁の深い奈良県大神神社の御神木が杉であることに由来すると言われます。
 酒林は、時を重ねるにつれ、徐々に茶色へと変化。これは、新酒がゆっくり熟成されていく過程と重ね合わせることができます。酒林の色を見ながら酒の熟成を待ち、すっかり茶色に染まると、飲み頃を迎えるのです。